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図書館員の気になる一冊

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奈良県立図書情報館に所蔵されている本の中から、図書館員が気になる1冊を紹介します。 (こちらの記事は、奈良県立図書情報館メールマガジン「Lib Info NARA -奈良県立図書…
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#インフラ

コンビニエンスストアと日本の流通:流通経済論からの分析【#図書館員の気になる一冊】

 忙しい時の食事やちょっとした買い物などでコンビニを利用する方が多いと思います。コンビニは、忙しい時や困った時にいつでも頼れる、私達の生活に欠かすことができない身近なものになっているのではないでしょうか。  経済産業省によれば、コンビニは「飲食料品を使い、売り場面積30平方メートル以上、250平方メートル未満、営業時間が1日14時間以上のセルフサービス販売店」と定義されています。コンビニの始まりは、1920年代末のアメリカとされ、1970年代から日本でも出現するようになり、1

集まる場所が必要だ : 孤立を防ぎ、暮らしを守る「開かれた場」の社会学【#図書館員の気になる一冊】

 1995年にシカゴを襲った熱波は、貧困や暴力の問題を抱えた地域で多くの死者を出しました。そのなかで少ない被害に留まった地区の存在を知った著者は、その理由を探るために現地を訪れます。そこで目にしたのは、整備された公園や活気ある商店で住民が交流する姿でした。  公共空間で培われた人間関係が災害時に人々の孤立を防いだことから、命を守るコミュニティを構築・維持するには、「社会的インフラ」、すなわち「集まる場所」が必要であることに著者は気づきます。そして、これが日常生活においても人々

防災アプリ特務機関NERV : 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年【#図書館員の気になる一冊】

 2010年2月、ツイッター(現:X)上に気象警報をツイートするアカウント「特務機関NERV」が登場しました。特務機関NERVとは、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン(通称エヴァ)」の主人公が所属する組織名。しかし、これは公式アカウントではなく、エヴァ好きの大学生・石森大貴氏が遊びで始めたものでした。それがやがて本気のアカウントに変わり、2019年にはスマホアプリ「特務機関NERV防災」をリリースするなど、日本屈指の災害・防災ツールへと進化していきます。  転機は、東日本大震災で