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図書館員の気になる一冊

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奈良県立図書情報館に所蔵されている本の中から、図書館員が気になる1冊を紹介します。 (こちらの記事は、奈良県立図書情報館メールマガジン「Lib Info NARA -奈良県立図書… もっと読む
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2023年7月の記事一覧

「畠中尚志全文集」【#図書館員の気になる一冊】

 スピノザは17世紀のオランダの哲学者です。44歳で亡くなるまでに出版された著作は2冊しかなく、彼の主著とされる『エチカ』も、死後友人たちの手による遺稿集として出版されたものでした。ところで話は変わりますが、生前にたいへんな数の作品を残し、当時は時代の寵児になっていた人も、時代の波にさらされ、すっかり忘れられてしまうということは多々あることです。  文学者であれ芸術家であれ学者であれ、時間という誰も避けることのできない波に翻弄される存在であることはどうすることもできないという

「ぼくは独り暮らしの老人の家に弁当を運ぶ」【#図書館員の気になる一冊】

 芸術大学の写真学科を卒業した後、高齢者専門の弁当配達のアルバイトをしていた著者は、ある日バイト先の店長から「お客さんの写真を撮ってみたら?」と勧められる。その言葉を受けてひとまずカメラを携えて配達に出るようになったものの、お年寄りたちの生活状況に面食らい、なかなかシャッターを切ることができない。半年後にはようやくレンズを向けられるようになり、カメラを通してのコミュニケーションを楽しむことができるようになるが、一方で大きな葛藤を感じることに。 何のために撮影しているのか、これ