図書展示「阪神・淡路大震災からの復興」の開催について
1月17日は「阪神・淡路大震災が発生した日」
地震発生は1995年1月17日午前5時46分、最大震度7の激しい揺れが大都市圏を襲い、甚大な被害をもたらしました。
あれから28年が経過し、被災地はどのように復興を遂げたのでしょうか。
今回の図書展示では人々の努力や苦悩、残された課題にも触れながら、被災地の復興への道を辿ります。
また、阪神・淡路大震災がきっかけで生まれた防災や減災への意識の高まりや学問もご紹介いたします。
図書展示では令和5年1月17日から「阪神・淡路大震災からの復興」を
テーマに下記のカテゴリの資料を約100冊展示します。
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①地震発生
②復興への道
③防災・減災意識の高まりと学問への発展
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それでは、展示資料をほんの少しですがカテゴリ別にご紹介いたします。
①地震発生
『スマホで見る阪神淡路大震災 : 災害映像がつむぐ未来への教訓』
本書は、朝日新聞ホールディングスがインターネット上で公開している「激震の記録1995 取材映像アーカイブ」の2000クリップのうちの2割弱を抜粋し、本文にあるQRコードにスマートフォンをかざして当時の貴重な映像とその解説文が見られるようになっています。
1995年1月17日から8月23日までの映像が収録されており、地震発生の瞬間から復興に向かう様子が非常に分かりやすく構成されています。
最も衝撃的なのが、地震発生の瞬間の生放送番組の映像が収められているということです。当時、朝日放送では、大阪市のスタジオで生放送番組中でした。激しい揺れの後、停電のため、一時的に画面が消え無音となりますが、その後すぐに放送が復旧します。地震発生の瞬間の激しい揺れ、大きな音や出演者たちの動揺、アナウンサーの呼び掛けが生々しく伝わってきます。大阪市は震度4でしたが、それ以上の揺れの大きさと恐怖を感じさせられる映像です。
本書を通して震災の恐ろしさと復興への道の難しさを改めて認識するとともに、震災を風化させないことや教訓を生かすことの大切さを再確認させられます。
『被災者に寄り添って : 神戸新聞の震災報道 : 阪神・淡路大震災から東日本大震災へ』
阪神・淡路大震災を経験した地元の神戸新聞社が、阪神・淡路大震災と東日本大震災についてまとめた図書です。二部構成になっており、前半は、阪神・淡路大震災での教訓を生かして東日本大震災の被災者の現状や復興について伝えています。後半は、阪神・淡路大震災発生時の状況や社内の動き、当時の紙面、2005年から現在まで神戸新聞で連載されている「ひょうご防災新聞」の抜粋が掲載されています。「ひょうご防災新聞」は、地震のメカニズムや被災した際に求められる対応などを分かりやすく紹介しています。
②復興への道
『大災害の経済学』
著者の林敏彦氏は、阪神・淡路大震災の復興基金設立に関わり、「ひょうご震災記念21世紀研究機構」研究統括を歴任し、兵庫県の復興政策に尽力されました。
本書は、震災などの災害だけではなく、9・11同時多発テロなどの有事の際に地方自治体や国が取るべき政策について経済的な面から述べられています。東日本大震災直後に出版されましたが、阪神・淡路大震災についても大きく取り上げられています。阪神・淡路大震災の経済的問題点を整理し、明らかになった教訓について理解しやすくまとめられおり、また、民間の力によって経済復興を果たしたのが大きいということも解き明かしています。
本書を通じて、戦後初めて経験した大災害とも言えるこの震災から、わたしたちが、今後遭遇するかもしれない大災害にどのように立ち向かうのかを考える一助になると思います。
『心のケア : 阪神・淡路大震災から東北へ』
阪神・淡路大震災で得た知見を、被災地で活動する人やこれから支援に向かう人に届けたいと出された本です。東日本大震災が発生した直後に企画され、半年後に出版されました。
著者の加藤氏は兵庫県こころのケアセンターの副所長を務める精神科医で、阪神淡路大震災以後16年間ずっとこころのケアに携わって来られました。
最相氏からのインタビュー形式でその活動を振り返り検証しています。
『災害がほんとうに襲った時 : 阪神淡路大震災50日間の記録』
本書は阪神・淡路大震災時、精神科救急の司令塔として活躍した医師中井氏が観察した震災後50日間の記録です。彼は戦後の精神医学を切り開いた高名な医師であっただけでなく、文学や哲学など、多様で深い教養を備える優れた文筆家でした。本書でも中井氏の俯瞰した視点は医学領域を超え示唆に富んでいます。
『よみがえる神戸 : 危機と復興契機の地理的不均衡』
著者は、イギリス出身ですが震災当時は京都在住で阪神・淡路大震災を経験しました。本書で神戸市の震災復興が何を達成したのかを明らかにしたかったといいます。阪神・淡路大震災における神戸市の被害の全貌を明らかにし、データや資料に基づいて国と神戸市の復興政策について丁寧に論じています。また、反対運動や住民参加についても触れられ、復興過程での様々な問題点についても言及されています。
③防災・減災意識の高まりと学問への発展
『災害時のメンタルヘルス』
災害時の精神医学という領域は、阪神・淡路大震災と、その後の新潟県中越地震の経験から認識され始めた新しい分野で、2011年の東日本大震災ではこの分野の医療が大いに役立ったといいます。
活動の重要性から、厚生労働省の呼びかけで、災害時の精神医療活動を行うために都道府県によって組織される災害派遣精神医療チーム(DPAT)もつくられました。
この災害精神医療現場での実際や知見を、80もの項目から、読者の必要に応じてどこからでも選択し学びとることが出来るようになっています。
『防災心理学入門 : 豪雨・地震・津波に備える』
人は経験や思い込み、周りの環境などにより、物事を非合理的に判断してしまうことがあります。例えば、2018年に200名以上の死者を出した西日本豪雨では、「防災行政無線」あるいは「テレビやラジオ」の呼びかけで避難行動を起こした被災者は全体の一割程度で、実際に身の危険が差し迫るまでは避難を決断しなかった人が多かったことがわかっています。
異常事態が起きたとき人は自分を安心させるため、「これは正常の範囲内だ」「自分は大丈夫」と思い込む傾向が強いそうです。ですから、人の心の動き方を知っておくことは災害時に身を守るうえで大切ではないでしょうか。
本書は京都大学防災研究所附属巨大災害研究センター教授の矢守克也氏のエッセイで、防災心理学の基本と最新の話題が学べます。
他にも、まだまだ関連本を展示します! 是非ご来館ください。
【展示の様子】