夢二と花菱・耕花の関東大震災ルポ【#図書館員の気になる一冊】
今年は、大正12年(1923)9月1日に発生した関東大震災から、100年の節目に当たります。関東大震災は、近代日本の首都圏に未曾有の被害をもたらした、特筆すべき災害で、我が国における災害対策の出発点となりました。
本書は、『都新聞(現在の東京新聞)』に大正12年(1923)9月14日から10月4日まで21日間にわたり連載された『東京災難画信』と『夕刊報知新聞』に大正12(1923)年9月30日から11月1日まで掲載された『大震災印象記大正むさしあぶみ』を収録しています。
『東京災難画信』は、画家・竹久夢二(1884~1934年)が、関東大震災後、スケッチブックを手に日比谷公園、銀座、本所被服廠跡、浅草観音、浅草橋などの被災地を回って、画と文を描いたルポルタージュです。未曾有の災害を目の当たりにした夢二は、『東京災難画信』のなかで「所謂大正文化の模範都市と見えた銀座街が、今日は一躍数里の焦土と化した。」と記すとともに、「被服廠跡」では、「災害の翌日に見た被服廠は実に死体の海だった」と記すなど、関東大震災の甚大な被害の様子が描かれています。
『東京災難画信』につづく画と文のルポルタージュ『大震災印象記 大正むさしあぶみ』は、画家・版画家の山村耕花(1886~1942年)が描き、劇作家の川村花菱(1884~1954年)が文章を添えたものです。「本所被服廠跡」の章には「一時に3万数千人の命を奪つたものは、全くこの旋風のなした業」と記されるなど、関東大震災の過酷な現実を伝えています。
関東大震災の記憶・教訓を継承し、防災について考え、災害に備える機会としていただければ幸いに思います。
(にしかわ けいこ)
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