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三省堂国語辞典から消えたことば辞典【#図書館員の気になる一冊】

 「辞書を知るなら序文から」そんな発見をした本をご紹介します。
 最近、紙の辞書を引くのがおっくうで、何でもネットで検索してしまう。そんな方も多いのではないでしょうか。かくいう私もそのひとり。手に取る機会が減った紙の辞書ですが、改訂版が発行されると、にわかに脚光を浴びます。どんな言葉が追加されたのか、削除されたのかが注目され、メディアでも取り上げられています。
 さて、2022年1月には『三省堂国語辞典』の第8版が発行されました。『三国』の愛称で親しまれ、前身の辞書『明解国語辞典』(1943年)から数えると10冊目、80年以上の歴史ある小型国語辞書です。改訂ごとに、様々な言葉が削除されました。どんな言葉が消えていったのか、消えた言葉1,000語を集めたのが本書です。たとえば第8版で消えたのは、「着メロ」「派手婚」「地味婚」など。なんと「ファミコン」は第6版(2008年)で消えていたようです。その言葉が最後に載った紙面を掲載し、言葉の変遷や消えた事情なども補足しています。
 ぱらぱらとめくって、懐かしい言葉を見つけるのもこの本の醍醐味ですが、私のオススメは序文から始まる冒頭部分です。この本を編むことになった経緯や『三国』の歴史、「徹底的に現代日本語の辞書」を目指す『三国』の編さん姿勢についても語られています。実際に使われている言葉を収集するため、新聞やテレビなどのメディアはもちろん、ふと耳にした会話や街角の看板まで、用例収集を続ける編者陣のたゆまぬ努力が『三国』には反映されているようです。
 この本を読み終えて『三国』の序文を読むと、辞書編さんにかける熱い想いが伝わってきます。
 本書は「引く」だけではもったいない、味わって、発見する「読む」辞書です。 

(みはら なみ)

『三省堂国語辞典から消えたことば辞典』 見坊行徳、三省堂編修所編著 三省堂 2023.4

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