「星座の起源 : 古代エジプト・メソポタミアにたどる星座の歴史」【#図書館員の気になる一冊】
夜空を見上げれば、そこにはたくさんの星が輝いています。今の季節だと、はくちょう座のデネブやさそり座のアンタレスなどが有名なのではないでしょうか。
人類は太古より星を眺め、観測し、そこから様々な情報を得たり、星の並びに意味を見出そうとしたりしてきました。日本でよく知られている星座にまつわる物語の多くは、古代ギリシャを起源としています。しかし、その古代ギリシャに起源を持つ星座には、さらに古い時代、つまり古代エジプトやメソポタミアにその原型があったのではないか。本書はこの説に始まり、古代エジプトやメソポタミアに由来をたどる星座の起源の紹介へと続きます。
遺跡の壁画や天井画から推測されている当時の星座には、おひつじ座やふたご座といった馴染みあるもののほか、カバやイノシシといった現代には伝わっていないものもありました。ただ、それらの星座も今に至るまでに完全に消えてしまったわけではなく、時の流れの中で、例えばイノシシは現在のケンタウルス座やみなみじゅうじ座へと変化していったのではないかとされています。
また本書では星座の話だけに留まらず、古代エジプト・メソポタミアにおける天体観測にも触れており、紀元前の日食や彗星の観測についても述べられています。同じ古代文明でもエジプトとメソポタミアでは観測の重点を置いていた部分が異なり、残されている記録に差があるのも興味深いポイントです。
果たして今から二千年以上前の人は、夜空を見上げ何を思ったのか。ぜひ本書を通じて感じていただけたらと思います。
(すやま ゆうき)
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