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世界のブックデザイン2022-23 韓国編

「世界のブックデザイン2022-23」作品紹介、今回は韓国編をお届けします!
ご紹介するのはこちらの作品です。

世界で最も美しい本 2023 栄誉賞
2022 韓国のベスト・ブックデザイン ピクトリアル 第1位
『사뮈엘 베케트 선집 The Selected Works of Samuel Beckett』
[サミュエル・ベケット選集]
著者:Samuel Beckett
発行:워크룸 프레스 workroom press
ISBN:9788994207650(セット)
デザイン:김형진 Kim Hyungjin
写真: 김경태 Kim Kyoungtae

本作は、韓国のベスト・ブックデザイン賞で入賞、世界で最も美しい本2023コンクールでも栄誉賞を受賞しています。

全11巻を動画でご紹介!

「2022 韓国のベスト・ブックデザイン」の審査コメントはこちら。

 このシリーズの表紙には書名も著者名もない。代わりに、抽象的な形と著者名の2 文字のイニシャルの組み合わせで覆われている。主な情報は背のみにある。この選択はかなりの衝撃である。
 「本は物体である。印刷された本は物体として存在する」。本書の編集者のこの言葉が示すように、本の表紙を表、背、裏の3 つの平面としてではなく、六面体を囲む1 つの面として見れば、書名、著者名、出版社のロゴが3 つずつあるのは冗長だ。
 表紙についてデザイナーは「サミュエル・ベケットのような人物を切り取るとき、表紙には写真が最も優れている」と説明している。そして、ベケットの『モロイ』のなかで、登場人物が小石をしゃぶるシーンに強烈な印象を受けたという理由で、石のバリエーションを表紙に用いた。
 背は丸みを帯び、濃いグレーのクロスで全体が覆われている。イメージは箔押しによるもので、小石を押し当て取り除いたあとの柔らかい板のような印象を受ける。その結果、それぞれ異なる形になり、気に入った石を拾い上げ、1 冊ずつ集めていくような心象を抱かせる。実際、表紙を開くと最初のページには、表紙のグラフィックスに使われた実際の小石の写真が掲載されている。
 このようにして、きめ細かく磨き上げられた11 個の石は、1 つの塊として見える。
 集めた作品を並べて本棚で眺めていると、もはや小石ではなく、ベケットの作品タイトルが見えてくる。翻訳者の名前も読める。やっと必要な情報が手に入る。本を取り出して読むこともできる。この美しいデザインは、1 つのものを1か所に集めるというコレクションの本質を反映したものである。

2022 韓国のベスト・ブックデザイン 審査コメント

ひと際目立つ1冊を写真でご紹介します。

11冊の中で唯一、表紙に白黒以外が使われた1冊。
表紙を開くと、表紙と同じような形の石の写真があらわれます。
さらにページをめくると、カラフルな絵が出てきます。


記事ではお伝えできませんが、独特の手触りも魅力の一つです。
ぜひ来館して確認してみてください!

最後に「世界で最も美しい本 2023」での審査コメントもご紹介します。

 これはデザインにおける作家性の素晴らしい例である。このシリーズは、トピックに応じた制約における多様性を利用している。つまり、著者の作品と、写真家の個人的な石のコレクションとの出会いというテーマをバリエーションとして用いることで、シリーズに必要な繰り返しに取り組んでいる。全11 巻のシリーズは、革新的なブックデザインによって、とても個性的な仕上がりとなった。
 このアイディアはブックデザイナーによるものである。ベケットの小説『モロイ』の中で、主人公は住んでいる洞窟近くの海岸で石を集めている。
それが写真家キム・キョンテの石のコレクションにとてもよく似ていることから、すべての小説の冒頭には、そのコレクションから小石のモノクロ写真が掲載されることになる。そしてそれを抽象的にしたものがモチーフとなり、箔押しの技術を用いて表紙に上品に表現されている。表紙にはほかに、作者のイニシャルだけが記されており作品タイトルは省略されている。その他の重要な情報は、すべて丸みを帯びた本の背で読むことができる。
 それぞれの小石は、自動的に1 つの物語を意味している。それぞれの物語が異なる感情を呼び起こすように、それぞれの小石も色や形、表情が異なる。石を集めるのが好きな人もいれば、物語や本を集めるのが好きな人もいるだろう。

世界で最も美しい本 2023 審査コメント

「世界のブックデザイン2022-23」
会場:奈良県立図書情報館 3階ブリッジ
期間:2024年6月1日(土)~7月30日(火)
※会期中、毎週月曜日(7月15日(月)は開館)、6月28日(金)、7月16日(火)休館開館時間:9~20時
入場無料

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