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【展示ツアー(前編)】ゴーリーの世界へ飛び込む——ゴーゴーゴーリー

11月10日(日)まで、当館2階にて「ゴーリーの世界へ飛び込む——ゴーゴーゴーリー」を開催中です。本展示を前編・後編の2回にわたってご紹介します!


開催の経緯

今回の展示は、奈良県立美術館で開催している特別展「エドワード・ゴーリーを巡る旅」の関連図書企画展であり、展示内容の提案から解説の作成まで、同館の学芸員さん全面協力のもと実現しました!
ゴーリーの著作だけでなく、ゴーリーに影響を与えた文化・芸術に視点を広げ、資料を集めています。

奈良県立美術館 特別展「エドワード・ゴーリーを巡る旅」

奈良県立美術館ホームページ:https://www.pref.nara.jp/67154.htm

エドワード・ゴーリーについて

エドワード・ゴーリー(Edward Gorey, 1925-2000)
アメリカ、シカゴ生まれ。独特な韻を踏んだ文章と、モノトーンの緻密な線描が不思議な世界観を作り出す多くの絵本を手がけ、世界中に熱狂的なファンをもちます。20世紀前半のアメリカで早熟な子供時代を過ごし、兵役を経てハーバード大学でフランス文学を専攻。1950年代からはニューヨークに住み、出版社に勤務してブックデザインなどを手がけ、やがて作家として独立。バレエや映画などの文化に熱狂し、19世紀イギリス文学から『源氏物語』に至るまで多くの古典を乱読し、影響を受けていました。後年は、マサチューセッツ州のケープコッドの、「エレファント・ハウス」と呼ばれた邸宅へと移り住み、2000年に急逝するまで活動を続けました。

奈良県立美術館プレスリリース

図書展示紹介

図書企画展での展示を写真と共にご紹介していきます!
※8月31日に撮影しました。

ゴーリーの著作。プロフィール(左上)も展示しています。
※人気のため、現在は貸出中多数です!

日本では、ゴーリーが亡くなった2000年に初めて、『うろんな客』『ギャシュリークラムのちびっ子たち:または遠出のあとで』『優雅に叱責する自転車』の3冊が翻訳出版されました。以降も、アメリカ文学研究者で翻訳家の柴田元幸氏によって続々と翻訳が進められ、現在30冊以上の著作と挿絵提供本が日本語で楽しめます。

図書展示「ゴーリーの本棚」


『ゴーリーの本棚』と題し、ゴーリーが所蔵していた本を集めています。

死後に残された蔵書は約2万6000冊にものぼる愛書狂だったゴーリー。残された書籍の多くは、サンディエゴ州立大学図書館に寄贈されました。
サンディエゴ州立大学図書館のEdward Gorey Personal Libraryは以下のリンク先からご覧いただくことができます。

図書展示「ゴーリー作品を構成するキーワード」

イギリス・ヴィクトリア朝、西洋美術からバレエまで…
ゴーリー作品を構成する様々なキーワードから本を集めています。
イギリス・ヴィクトリア朝の文学、芸術

ゴーリーはその作風から、19世紀イギリスの作家だと勘違いされることがありました。実際に、ゴーリーに最も大きな影響を与えたものの一つにイギリス・ヴィクトリア朝の文学と美術があります。ゴーリーが最も敬愛した作家はジェイン・オースティン(1775-1817)で、美術に関しては、ゴーリーの描く緻密なモノクロームの世界の根っこには、ヴィクトリア朝の版画があると語っています。また、ヴィクトリア朝期の画家でありナンセンス詩人のエドワード・リア(1812-1888)の著作『ジャンブリーズ』と『輝ける鼻のどんぐ』に挿絵をつけて出版しています。
さらに、ゴーリーは自分の芸術への影響源に「ものごとがいわば凍りつく瞬間を捉えることのできる」画家として、イタリアルネサンスの画家パオロ・ウッチェロとピエロ・デラ・フランチェスカ、バロックの画家ジョルジュ・ド・ラ・トゥール、ヨハネス・フェルメール、同時代からはバルテュス、フランシス・ベーコンの名前を挙げました。

ゴーリーの著作に欠かせない不思議な生き物たち。
不思議な生き物が描かれた本をピックアップ!
『うろんな客』 1955年頃 挿絵・原画 ペン、インク、紙
©2022The Edward Gorey Charitable Trust

古今東西、多種多様な文化に接し吸収していたゴーリーから、いくつもの不思議な生き物が生まれました。中でもとりわけ人気の高い『うろんな客』の主人公は、突然家に入り込んできたまま、居座り続ける黒いペンギンのような生き物です。
ほかにも、丸い頭と胴体に足だけが付いた黒いブラックドールや、長い手足を持ったフィグバッシュなど、いずれの生き物も一見不気味な様相ながら、ユーモラスで愛嬌があり、ゴーリー独特の世界観を作り出すのに一役買っています。

上の階からの展示の様子

後編へ続く…

今回ご紹介した本や説明を含め、展示している本や、解説を収録したブックリストを当館で配布しています。解説は、奈良県立美術館の学芸員さんにも作成をご担当いただきました!
ご紹介したのはごく一部ですので、ぜひご来館のうえご覧ください。

後編では『図書展示ぐるっと一周』動画もご紹介予定です。お楽しみに♪
最後までお読みいただき、ありがとうございました!

【参考文献】
・宮地信弘「悲しみのリメリック : エドワード・リアのノンセンス・ワールド」(『三重大学教育学部研究紀要 人文・社会科学』51号、2000年)63-98頁
・カレン・ウィルキン編(小山太一・宮本朋子訳)『どんどん変に… エドワード・ゴーリー インタビュー集成』河出書房新社、2003年
・「巻頭大特集 エドワード・ゴーリー 謎に満ちた異色の絵本」(『MOE』白泉社、2019年12月)6-37頁
・グレゴリー・ヒスチャック[ほか]執筆, 柴田元幸[ほか]訳『エドワード・ゴーリーを巡る旅』[増補版] イデッフ, 2024年
・濱中利信編/柴田元幸, 江國香織[ほか]著『エドワード・ゴーリーの世界』[改訂増補新版] 河出書房新社、2020年

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