「生き物が大人になるまで 「成長」をめぐる生物学」【#図書館員の気になる一冊】
毎年、子育てについて書かれた本が数多く出版されています。しかし、人間の子育てや成長を、ほかの生き物のパターンと比較しながら書いた本というのは珍しいのではないのでしょうか。
幼虫時代はなぜ必要なのだろう?子育てをする生き物としない生き物は何が違うのだろう?成長するってどういうことだろう?本書は、こうした素朴な疑問について考えることからスタートし、雑草生態学の専門家である著者はこうした疑問に答えるべく、多種多様な生き物の生態を紹介していきます。そして、それぞれの生き物と人間の成長を比較し、人間の子育てや成長の意味合いを考察します。
例えば、人間ほど子育ての期間が長い生き物はほとんどいません。哺乳動物は子育てをしますが、多くの場合その期間は1年以内、長いものでも2~3年です。それに比べて人間は10年以上の時間をかけて子育てをします。これは人間の子どもがほかの生き物よりも劣っているということではなく、ゆっくり育てることは人間の生存戦略の1つなのです。このように、人間とはそういう生き物だと一言で片づけられてしまいそうなことにも、人類が長年の進化の中で培ってきた戦略が隠されています。
人間の成長に、ほかの生き物の生態は関係ないと思われるかもしれません。しかし、ほかの生き物から学ぶことは多く、また彼らの生態を知ることで、より人間の成長を深く理解することができます。人間は成長し続ける生き物です。その成長を見つめるということは、人生や生き方を見つめることにもつながるのではないでしょうか。
(だいどう ゆうじ)
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