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月夜の黒猫事典 : 知られざる歴史とエピソード (ひみつの本棚シリーズ)【#図書館員の気になる一冊】

 黒猫と聞くと、どういったイメージをお持ちでしょうか。昔の日本では不思議な力があると考えられていたようです。『日本国語大辞典』によると、「黒猫」は、「全体の毛の色が真黒な猫。江戸時代には、これを飼えば労咳(肺結核)が治るという俗信があり、恋の病にも効験があるといわれた。」とあります。自由気ままで神秘的な猫の中でも、黒猫は特別な存在だったことがわかります。日本以外の国々でも、黒猫には特別な力があると考えられていました。そのことがわかるのがこの本です。
 本書は、世界の黒猫にまつわる逸話や伝説を収録し、黒猫を恐れる元となった迷信や、逆に幸運の象徴となった物語など、さまざまな角度から黒猫について語っています。
 古代エジプトでは、闇夜に光る猫の眼は太陽神ラーを思わせることから、神の化身だと見なされ、多産と母性のシンボルである守護女神バステトとして神格化されました。猫が死ぬと、その亡骸は時の風化から防ぐためにミイラ化されたといいます。ところが、中世になると黒猫が悪魔だというイメージが形成され始め、中世ヨーロッパで魔女狩りが行われていた時代には、魔女とともに多くの黒猫が虐殺されました。
 また、19世紀のロマン主義の時代には、猫は作家や詩人、画家、歌手など芸術家たちのインスピレーションの源となりました。1881年、モンマルトルの丘にキャバレー“黒猫(シャ・ノワール)”がオープンすると、黒猫は歌となり詩に読まれました。
 それ以外にも、歴史上の人物と黒猫との関わり、不幸の前触れとして、または幸運のマスコットとしての民間伝承や迷信、またネズミを退治することから船乗りたちの一員となった猫など、様々な話が紹介されています。
 現代でも、魔女の宅急便のジジ、フィリックス・ザ・キャット、ヤマト運輸のマスコットなど黒猫のキャラクターは沢山あり、多くの人に愛されている黒猫。素敵なイラストや写真も多く載っていますので、ぜひ本書を読んで妖しく神秘的な黒猫の魅力を感じてください。

(うえはら ちえ)

『月夜の黒猫事典 : 知られざる歴史とエピソード (ひみつの本棚シリーズ)』ナタリー・セメニーク著 柴田里芽訳 グラフィック社 2023.7

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