図書館で「サクラ」を愛でる。
こんにちは。奈良県立図書情報館のヤマです。今年もそろそろニュースに桜前線が出てくる季節になってきました。奈良県立図書情報館の目の前を流れている佐保川もきれいな桜並木があり、毎年人々が訪れる花見スポットとなっています。
そこで、今回のBBBのテーマは「サクラ」です。まず、当館職員がお花見をした気分になれる本を3冊選んでみました。
お花見シーズン お花見した気分になれる桜の写真
さくらいろ
一度は見たい桜
京都桜案内
昔から有名な桜の名所である吉野山は4月の上旬から中旬にかけて3万本ともいわれるシロヤマザクラが豪華絢爛に咲きみだれます。そんな吉野の桜が見られる絵図、古典籍を3点選んでみました。
お花見シーズン お花見した気分になれる桜の絵図 in 吉野山
大和國大峯山略図
大和路便覧一名芳山花栞
吉野山定点カメラ
現在も人々を魅了する吉野の桜。2021年の様子をテレビ局が定点カメラで撮影しています。
吉野山観光協会
また吉野山観光協会では、毎年3月頃から開花情報をホームページ及びFacebookで掲載しています。
さて、BBBの恒例となってきました #連想図です。今回は、「サクラ」という連想がしやすいテーマでしたので、色々な言葉が集まりました。なかには、 #クローン #羊のドリー など、なるほど!となる連想をした言葉もありました。
#連想図
まずは、奈良県立図書情報館の司書たちが「サクラ」から連想した本の一部紹介します。
桜の森の満開の下
桜は本当に美しいのか : 欲望が生んだ文化装置
桜守のはなし
次に、連想図から3人の人物を紹介します。
西行
説話や伝説で有名な歌人西行氏がサクラとどのような関係があるかというと、吉野山をはじめ多くの桜の和歌を読んでいます。
咲きそむる花を一枝まづ折りて昔の人のためと思はむ
この歌は桜が大好きな自分のためではなく、「昔の人」にまず手向けようと詠っています。では「昔の人」とはどのような人でしょうか。『山家集 ; 聞書集 ; 残集(和歌文学大系)』では、「(前略)今はなき人のために手向けようと思う。」と訳されています。また、『西行(コレクション日本歌人選 048)』では、西行氏の他の歌からも考えて、「(前略)恋人といった存在ではなく、彼が追慕し、自由に山桜を愛でることのできた古人のことであると考えることができる。(後略)」と解説しています。
ちなみに、西行氏の時代の桜は、今のようにソメイヨシノではなく、(ソメイヨシノは江戸時代末期に生まれ、明治時代初めに広まった)花や葉などに個性がある山桜でした。そのため、こんな歌も詠んでいます。
吉野山去年のしをりの道かへてまだ見ぬ方の花を尋ねん
去年とは違う道に行ってまだ見ていない桜を見に行こうというこの歌は、当時は色々な山桜が咲いていたことに関係があるのかも知れません。
しかし、桜が違えでど、人々が桜を愛でるのに集まるのは古今変わらないようで。
花見にと群れつつ人の来るのみぞあたら桜の咎には有ける
「あたら」とは良いものを持っているのにそれが発揮できない状態を意味します。花見の人が大勢やってきて騒がしいのは、桜の魅力を半減してしまうが、それは桜自身が招いた罪であると詠っているのです。
『西行(コレクション日本歌人選 048)』では、「(前略)桜をこよなく愛するために、邪魔されずに愛でたいという気持ちが満たされないことを、桜の「咎」にしようとする奔放な振る舞いは、西行を非常に親しみやすい人物にするものでもある。」と解説しています。
そして、西行氏の最も有名な歌と言ってもよい歌がこれです。
願わくば花の下にて春死なんその二月の望月のころ
西行氏の歌といえばこの歌を思う人が多いのではないでしょうか。亡くなるときはこうありたいものだと歌に願いを込めた西行氏は、文治6年(1190年)2月16日にこの世を去りました。
川路聖謨
日露和親条約に調印した江戸時代の幕臣、川路氏とサクラの関係は、どういったものでしょうか。
川路氏は、弘化3年(1864年)に奈良奉行に任じられます。川路氏は「奈良に貶されし」といって不満を漏らしていたようです。
この転出は、老中水野忠邦が失脚し、重用されていた川路氏も左遷されたとも考えられていますが、当時の奈良は博奕などの軽犯罪、少年犯罪が横行し、奈良奉行も内部の規律は乱れ、改革必要とされていたところ、佐渡奉行での実績がある川路氏の手腕が見込まれたとの考えもあるそうです。
そして、川路氏は江戸を出立した日から5年余りの奈良奉行時代に実母宛にしたためた日記『寧府紀事』があります。日記には奈良の歴史や風土に囲まれている毎日の生活について書かれています。この『寧府紀事』をテキストに古文書の読み方を学ぶ「古文書超入門講座」という動画を奈良県立図書情報館noteで公開しています。是非ご覧ください。
川路氏が行った様々な改革のなかに、植樹・植林事業があります。そのなかに東大寺・興福寺への植樹があります。当時の奈良は名所・旧跡は衰微しており、特に興福寺は享保2年(1717年)に炎上して大半の堂宇を失っていました。そこで、川路氏は春には桜、秋には紅葉を楽しめる名所を両寺を中心に復興することが最善の策として、まず率先して両寺に桜と楓を奉納、その後社寺や民の賛同を得て、わずか2ヵ月余りのうちに数千本の桜・楓の苗木が集まったとされています。それらを両寺の境内、奈良奉行所内、高円、佐保地域などにまで植樹しました。
現在は、当館近くの佐保川の桜並木の上流に川路氏の名がついた「川路桜」が残っています。そして奈良では、川路聖謨といえば、下田で日露和親条約に調印した幕臣ではなく、「桜奉行」のイメージが強いそうです。
初音ミク
初音ミクは、2009年からライブがはじまり、アメリカでは2011年5月にTOYOTA USAのトヨタ・カローラの広告に起用され、BBCの東京2020オリンピックテーマソングにも使われています。また、ニコニコニュースによりますと、2007年から2020年までニコニコ動画に33万曲以上の初音ミクオリジナル楽曲が投稿されているというのこと。このような大人気なボーカロイドとサクラとの関係は、まず初音ミクの曲に「千本桜」という多くのアーティストがカバーした人気曲があることと、春のモチーフである桜が全体にあしらわれている初音ミク、「桜ミク」がいるとのことです。
また、青森県弘前市で開催される弘前四大まつりのひとつである春祭り「弘前さくらまつり」では、この桜ミクが公式応援キャラクターとなり、弘前さくら応援ソング 「「101回目の桜」feat.初音ミク」という曲でコラボをしています。
展示の様子
展示している本のリストは、こちらから!
*ご好評につき、資料を追加しました(2022年4月1日)。
↓
このように、古今問わずサクラは人々を魅了して、人々はサクラを愛でてきました。そこで、皆さんが魅了され、愛でた、
「サクラ」の写真、募集します。
時期、場所は問いませんので #サクラBBB で写真と一緒にTwitterでツイートしていただければと思います。BBBの展示で使わせて頂くかも知れません。(撮影場所(都道府県名)も書いて頂けると助かります。)
もちろん、佐保川の桜並木でもO.K.です。
「サクラ」の本、募集します。
もちろん、毎回恒例となった図書の募集もnoteで行います。
みなさんが「サクラ」と聞いて連想する本を、教えてください!
館内の展示コーナーにて紹介させていただきます!
(展示できない場合もあります……そのときは、ごめんなさい!)
例えば、こんな感じに
『街の灯 (文春文庫)』北村薫著
文庫のジャケットがきれいな桜の絵
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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