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奇妙な国境や境界の世界地図【#図書館員の気になる一冊】

 島国である日本で生活していると、日常生活の中で国境を感じることはあまりないかもしれません。しかし、世界に目を向けると、地続きで国と国が繋がっていることの方が多く、その境を自分の足で越えることができる場所も少なくありません。
 国境には山や川など自然物を利用したものもあれば、人為的に定められたものもあります。本書は、そのような国境や境界の中でも特異的なものを紹介した1冊です。
 例えば、アラブ首長国連邦(UAE)の領土の中にはオマーンの領地の一部が飛地としてあり、さらにその中にUAEの領地が存在しています。そのため、地図を見るとドーナツ状になった国境を確認することができます。この不思議な国境は、2つの世界大戦の間に、周辺の部族がそれぞれどの国に所属するか民主的に決めた結果、ある部族はUAEを、ある部族はオマーンを選ぶことで生まれました。
 時代と共に変化してきた国境や境界。その成立には国や民族同士の争いが少なからず関係しています。そのため、争いが絶えることのない現代において、曖昧になっている国境や境界は多く存在します。国と国、地域の間に引かれた線。それが一体、どうしてそこに引かれることになったのか。国境や境界の意味を知ることが、世界の歴史や情勢を知る一歩になるかもしれません。

(すやま ゆうき)

『奇妙な国境や境界の世界地図』 ゾラン・ニコリッチ著 松田和也訳 創元社 2023.1

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