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「SDGsとトイレ:地球にやさしく、誰もが使えるために」【#図書館員の気になる一冊】

 本書は「進化するトイレ」シリーズの第3弾です。日本において、災害時や体調不良などの理由がない限り、多くの人は、ある程度プライバシーと清潔が保たれたトイレに行きたい時に行くことができ、そしてそれが当たり前だと考え、「トイレ」の存在について特別に意識することは少ないのではないでしょうか。
 しかし、本書によると、安全で衛生的なトイレを使用できない人は、世界で約20億人いると言われており、そのうちの約5億人が野外で排泄しているそうです。この問題は、SDGs(持続可能な開発目標)にも6番目の目標「安全な水とトイレを世界に」として掲げられ、取り組むべき重要な課題となっています。
 排泄は生きていく上で欠かせないことから、トイレは、健康・貧困・教育・ジェンダー・環境などの様々な問題とつながり、影響を及ぼします。例えば、学校のトイレの数が少なかったり安全ではない場合、女子生徒は通学しにくくなり、教育を受ける機会が奪われ、就労も難しくなり貧困につながるといいます。屋外にしかトイレがない地域では、蛇に噛まれたり、女性が犯罪に巻き込まれる危険もあると本書は警鐘を鳴らしています。
 本書は、私たちが生きていく上で欠かせないトイレを通じて、SDGsをより深く理解させてくれます。また、日本が外国人旅行者から「日本のトイレは綺麗」「温水洗浄便座に驚いた」などと言われるほど世界のトイレ事情を牽引するまでになった歴史を知ることもでき、さらに環境に配慮した最新トイレの紹介や企業努力についても触れています。
 SDGsの「誰一人取り残さない」という理念が実現され、すべての人々が安全で快適なトイレを利用できる日がくることを願うばかりです。 

(さこう よしこ)

『SDGsとトイレ:地球にやさしく、誰もが使えるために』(進化するトイレ) 日本トイレ協会編 柏書房 2022.9

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