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陰陽師とは何者か:うらない、まじない、こよみをつくる【#図書館員の気になる一冊】

 突然の年越しに、当時の人は大慌てだったことでしょう。
 今から151年前、明治5年(1872)の11月9日、政府から改暦の布告が出されました。それまでの太陰太陽暦を太陽暦に改め、12月3日を明治6年1月1日とする突如の年明けが申し渡されたのです。本書によると、このことは、現在のカレンダーにあたる「暦」をつくっていた人々にも知らされていなかったようです。すでに刷り終えた暦の在庫を大量に抱え、彼らは莫大な損失をこうむりました。その中には、かつて陰陽師だった人たちも含まれていたようなのです。
 今回紹介するのは、国立歴史民俗博物館の企画展「陰陽師とは何者か-うらない、まじない、こよみをつくる-」の図録です。陰陽師というと、平安時代に活躍した安倍晴明を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。小説や漫画では、派手な術を使って、公家たちを呪いから守る超人的な姿で描かれています。しかし、実際の陰陽師たちは「何者か」と問いたくなるほど、時代によって役割や働きが変わっていったようです。本書では、彼らが登場する古代から陰陽師の制度が廃止される明治のはじめまでの歩みを240点以上の歴史資料とともにたどります。
 病気や怪我に効くまじないの本や、呪符が書かれた土器のほか、天文台のある屋敷図など、陰陽師の仕事である暦づくりに関係する史料も掲載されています。なかでも大和に移り住み、南都暦をつくった陰陽師の史料は興味深いものです。彗星(すいせい)の出現など天体観測を余白に書き込んだ暦、息子へのメッセージが綴られた占いの写本、暦づくりのスケジュールが分かる珍しい史料も紹介されています。
 常に自然を観測し、最新の知識と技術を集め、子孫に継承する。陰陽師であり続けるために努力を重ねてきた彼らのリアルな姿にふれることができる一冊です。

(みはら なみ)

『陰陽師とは何者か:うらない、まじない、こよみをつくる』国立歴史民俗博物館編 小さ子社 2023.10

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