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図書館員の気になる一冊

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奈良県立図書情報館に所蔵されている本の中から、図書館員が気になる1冊を紹介します。 (こちらの記事は、奈良県立図書情報館メールマガジン「Lib Info NARA -奈良県立図書…
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#言葉

英語の路地裏 : オアシスからクイーン、シェイクスピアまで歩く【#図書館員の気になる一冊】

 著者はシェイクスピアやフェミニズム批評、芸術の受容史等を専門とする文学者です。『お砂糖とスパイスと爆発的な何か』という刺激的なタイトルの批評書が2020年「紀伊国屋じんぶん大賞」に選ばれており、そちらをご存じの方もおられるかもしれません。本書は、著者が演劇から小説、ロックミュージック、映画にいたるまで、その豊富な知識をもって、英語が楽しくなるようなちょっとした「路地裏」や「脇道」の入り口を覗かせてくれるエッセイです。  目次を見るだけでも、シェイクスピア、イギリスの児童文学

「色の名前と言葉の辞典888」【#図書館員の気になる一冊】

 4月といえば、桜。図書情報館前の佐保川のソメイヨシノも綺麗に咲いています。桜一色だなあと花を見上げて、ふと「桜色」って本当はどんな色なんだろうと思いました。ソメイヨシノは白色が強い花ですが、県の花である奈良八重桜はもう少しピンク色をしているし、品種によって桜の花の色も様々です。決まった色があるのだろうか、そう思って手に取ったのがこの本です。  本書はタイトル通り、日本や世界の色、トレンドカラーなど全888色を紹介した色の辞典となっています。基本色名の他に、顔料や染料などの原

「まとまらない言葉を生きる」【#図書館員の気になる一冊】

 著者の荒井裕樹さんは、社会の中でいじめ・差別・不当な冷遇を受けている人たちの自己表現活動を研究する文学者。本書は、日々の生活の場でも政治の場でも「言葉が壊れてきた、壊されてきた」と感じる荒井さんによるエッセイで、言葉の「魂」や「尊さ」のようなものを感じられる実例がエピソードとともに18話収録されています。  この本のスタンスはあとがきによく表れているように思います。荒井さんは自身の仕事である「誰かの人生を言葉に換える」作業への葛藤について、少し乱暴だけれどと前置いた上で「一