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図書館員の気になる一冊

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奈良県立図書情報館に所蔵されている本の中から、図書館員が気になる1冊を紹介します。 (こちらの記事は、奈良県立図書情報館メールマガジン「Lib Info NARA -奈良県立図書… もっと読む
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2022年9月の記事一覧

「生き物が大人になるまで 「成長」をめぐる生物学」【#図書館員の気になる一冊】

 毎年、子育てについて書かれた本が数多く出版されています。しかし、人間の子育てや成長を、ほかの生き物のパターンと比較しながら書いた本というのは珍しいのではないのでしょうか。  幼虫時代はなぜ必要なのだろう?子育てをする生き物としない生き物は何が違うのだろう?成長するってどういうことだろう?本書は、こうした素朴な疑問について考えることからスタートし、雑草生態学の専門家である著者はこうした疑問に答えるべく、多種多様な生き物の生態を紹介していきます。そして、それぞれの生き物と人間の

「まとまらない言葉を生きる」【#図書館員の気になる一冊】

 著者の荒井裕樹さんは、社会の中でいじめ・差別・不当な冷遇を受けている人たちの自己表現活動を研究する文学者。本書は、日々の生活の場でも政治の場でも「言葉が壊れてきた、壊されてきた」と感じる荒井さんによるエッセイで、言葉の「魂」や「尊さ」のようなものを感じられる実例がエピソードとともに18話収録されています。  この本のスタンスはあとがきによく表れているように思います。荒井さんは自身の仕事である「誰かの人生を言葉に換える」作業への葛藤について、少し乱暴だけれどと前置いた上で「一