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台湾博覧会1935スタンプコレクション【#図書館員の気になる一冊】

 日本の統治40周年を記念し、1935年に台北で開催された「台湾博覧会」。文具店や書店、菓子店、旅館など、様々な企業・商店がオリジナルのスタンプを作成し大いに盛り上がったという。スタンプだけではなく、スタンプを作成した各企業・商店について著者・陳柔縉(ちんじゅうしん)氏が丹念に調査、写真も交えて紹介されることによって当時の街の様子や世相が浮かび上がるようである。
 加えて、台湾におけるスタンプの歴史、収録された309ものスタンプを蒐集した人物“楊雲源(よううんげん)”の人生にも光が当てられており、実に多彩な楽しみ方のできる1冊となっている。
 一方で忘れずにいたいのは、この博覧会が行われたのが「日本統治下」であったということ。日本の統治下にあった1895年から1945年までの50年間、台湾では国語として日本語の普及が図られた。本書に収められたスタンプそのままを日本の読者が楽しめるのは、スタンプが漢字だけでなく、カタカナ、ひらがなでも彫られているからにほかならない。「面白い」「可愛い」「楽しい」の裏側に目を凝らすこと、その背景に思いを馳せようとする目線は心がけていたいと思う。

(ふじもと あきこ)

『台湾博覧会1935スタンプコレクション』陳柔縉著 ; 中村加代子訳 東京堂出版, 2020.12

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